拡張減価償却 - 特別減価償却
特別減価償却では、資産寿命の特定年数の間、通常の減価償却額に係数を乗算して償却額を計算します。乗算係数と年数条件は、資産レコード (FAS) で各資産レコードに定義します。
たとえばイタリアの会計法では、特別償却方法を使用して、資産寿命の最初の 3 年間 (ただし使用済みの資産の場合は最初の 1 年間) は通常の減価償却額の倍の金額を償却することが認められています。これは、上記の初年度控除パーセンテージと合わせて使用できます。
特別減価償却は、通常の減価償却とは別のものとして管理する必要があります。これら 2 つの金額を合わせて減価償却金額が集計されます。通常の固定資産管理では、減価償却累計額が資産取得価額より大きくなることはありません。このため、減価償却の最終年度で、資産の残存価額がその年度の減価償却金額合計より小さい場合は、まず通常の減価償却方法で計算され、それから残っている金額だけに対して拡張減価償却方法で計算されます。また、資産の残存価額が通常の減価償却金額より小さい場合は、最終年度では通常の減価償却方法による償却額だけが転記され、拡張減価償却は計算されません。
例
イタリアの会計法では、特別減価償却分の金額は、資産の各年度の通常減価償却金額と同じでなければならないことが定められています。つまり、減価償却額の合計は、通常の減価償却の 2 倍の金額になります (ただし上記のように最終年度に金額が少ない場合を除きます)。資産レコード (FAS) で、通常の減価償却に対する係数を指定します。イタリアの会計では、1 に設定します。
- 2006 年 1 月 1 日に資産を購入
- 固定資産取得価額: 1000 ユーロ
- 通常の減価償却率: 22 %
- 初年度に 50 %の控除を適用
- この例では、最初の 3 年間に、通常の減価償却と特別減価償却を合わせた 2 倍の金額を償却できます。
年 | 2006 | 2007 | 2008 |
通常の減価償却 (ユーロ) | 110 | 220 | 220 |
特別減価償却 (ユーロ) | 110 | 220 | 120 |
年度合計償却額 (ユーロ) | 220 | 440 | 340 |
資産償却可能額 (ユーロ) | 780 | 340 | 0 |
SunSystems で特別減価償却を使用するには、 [元帳設定 (LES)] で [特別償却の適用] オプションを設定する必要があります。さらに [資産レコード (FAS)] で、通常の減価償却勘定科目とは別に、特別減価償却用の損益勘定科目と貸借対照表勘定科目、年数条件、開始年度、係数を指定する必要があります。
通常の減価償却額がすべて計算された後に、特別償却計算 (FAA) を使用して年度末に特別減価償却額を計算できます。特別減価償却を転記できるのは年度末だけです。 [資産特別償却計算 (FAA)] フォームで [取引転記] オプションを [いいえ] に設定すると、元帳転記を行わずに計算だけすることができます。計算結果を表示するレポートを何度か出力して、資産グループを最終計算に含めるかどうかを決めることができます。最終的に減価償却計算を転記すると、SYSTM の仕訳タイプと DPANT の仕訳入力者コードで特別償却用の損益勘定科目と貸借対照表勘定科目に転記されます。貸借対照表勘定科目の仕訳行には、D (減価償却) の資産記号が付けられます。
特別減価償却計算は、どの年度でも転記しなければ何回でも実行できますが、1 つの資産の計算結果を転記できるのは 1 年に 1 回だけです。また、年度の最終会計期に転記する必要があります。
資産除却と特別減価償却
固定資産の有効寿命期間中の除却では、資産の帳簿価額は次のように計算されます。
帳簿価額 = 取得価額 - 通常の減価償却額 - 拡張減価償却額
さらに詳しく述べると、
取得価額 = 購入価額 + 再評価額 - 価値減少額
資産の帳簿価額と売却価額 (売却ではなく処分した場合はゼロ) の差額に注意する必要があります。この差額によって、資産売却利得なのか損失なのかが決まります。帳簿価額が売却価額より大きい場合は、損失になります。
資産の除却が年度途中に行われる場合、帳簿価額には、その日付までの累計償却が考慮されます。ただし、拡張償却は年度末にのみ行われるため、除却された資産のその年度の拡張償却金額は計算されていません。