サイト間の品目または資材の移動
[マルチサイト在庫移動] フォームを使用して、一方のサイトで在庫の解放、もう一方のサイトでその受け入れが発生する在庫の簡単かつ迅速な移動処理を実行します。マルチサイト在庫移動では、作業指示を必要としません。また、移動時間は想定されません。この方法は、特定工場または近接した保管場所で頻繁に使用されます。全ての資材および財務トランザクションは、ユーザの介入なしに自動的に行われます。マルチサイト在庫移動には、以下の場合が考えられます。
- 異なる保管場所/ロット間
- 異なる倉庫/保管場所/ロット間
- 異なるサイト/倉庫/保管場所/ロット間
- 異なる会計グループ/サイト/倉庫/保管場所/ロット間
マルチサイト在庫移動の前提条件
- マルチサイトおよび複数倉庫環境を設定する必要がある。
- 移動する品目または資材の測定単位は、全てのサイトで同一でなければならない。
- マルチサイト在庫移動では、以下の条件で価格コード機能を使用できる。
- 移動は 2 つの会計グループのサイト間で行われる。
- 2 つの会計グループが同一通貨を使用している。
これらの条件が満たされない場合は、単価が使用されます。
- マルチサイト在庫移動は、複数通貨をサポートしない。
- 荷役費用をサポートしない。
- 輸送費原価をサポートしない。
- EU レポートをサポートしない。
- 書類またはサポートドキュメントを作成しない。先サイトおよび元サイトの会計エントリは、IC 配賦仕訳に自動的に転記される。
- 移動時間を想定していない。
- 予約数量のある品目または資材の移動をサポートしない。
プッシュ/プルトランザクション
マルチサイト在庫移動は、プッシュまたはプルトランザクションです。
プッシュトランザクションは、資材をサイト A からサイト B に移動します。
例:サイト A は移動元のサイトで、資材をサイト B に移動します。このとき、サイト A を元サイト、サイト B を先サイトとみなします。このトランザクションでは、サイト A の原価および価格が使用されます。
プルトランザクションは、資材をサイト B からサイト A に移動します。
例:サイト A は移動元のサイトで、資材をサイト B から移動します。このとき、サイト A を先サイト、サイト B を元サイトとみなします。このトランザクションでは、サイト B の原価および価格が使用されます。
システムでは、ある 1 つのサイトで移動する品目について、別の出荷サイトからマルチサイト在庫移動を入力できます。
保管場所のステージング
[マルチサイト在庫移動] フォームには、元保管場所と先保管場所の両方が表示されます。ただし、ユーザが有効な先保管場所を知らない場合があります。このため、一方または両方の保管場所で保管場所のステージングを使用することをお勧めします。
たとえば、サイト A で サイト B へのマルチサイト在庫移動を実行している場合、受入場所の入力を求められたら、[ステージング]と入力します。ステージングの場所が連続して使用される場合、サイト B のユーザはマルチサイト在庫移動によって入庫する品目または資材のステージング場所を必ず確認します。
マルチサイト在庫移動の原価
元サイトと先サイトの両方で、適切な勘定科目の設定に対する検証を実行すると、原価機能が起動されます。トランザクション日付と現在の会計期間の日付が照合されます。
品目または資材を 2 つの異なる会計グループ間で移動する場合は、トランザクションで単価または価格のいずれかを使用できます。移動では多くの場合、十分な単価が用意されており、単価を入力する必要はありません。ただし、価格を指定する場合は、以下に示す 2 つの価格コードを入力する必要があります。
- 品目の価格コード
- サイトの組合せに対して [サイト間パラメタ] フォームで定義された価格コード
マルチサイト在庫移動はこの 2 つの価格コードを確認し、一致していれば価格マトリックスを検索し、適切な価格方式が原価設定に使用されます。
資材トランザクションレコードと仕訳記帳も作成されます。マルチサイト在庫移動には移動時間がないため、仕訳記帳の転記に伴うタイミング上の問題は発生しません。したがって、マルチサイト在庫移動が入力されると、仕訳記帳は先サイトと元サイトに作成され、両方のエントリが同時に転記されます。
移動区分
以下のテーブルは、マルチサイト在庫移動でサポートされる移動、原価設定、および価格設定の区分を示します。
原価区分 | 保管場所間 | 倉庫間 | サイト間 | 会計グループ間 |
---|---|---|---|---|
1 - 同一原価 | はい | はい | はい | はい |
2 - 原価差異 | * | * | はい | はい |
3 - 価格または原価 | いいえ | いいえ | いいえ | はい |
キー:
* = 個別原価法のみ
Loc = 保管場所
Whse = 倉庫
Ent = 会計グループ
- サイト間同一原価 - あらゆるシナリオ(保管場所間、倉庫間、サイト間、会計グループ間など)での移動が可能です。
- サイト間原価差異 - サイト間および会計グループ間での移動が可能です。
- サイト間で使用される価格設定機能 - 有効な価格コードが設定されている場合に、会計グループ間での移動が可能です。価格が設定されていない場合は、代わりに単価が使用されます。
価格コード
マルチサイト在庫移動で使用する価格を決定する場合は、システムで検証が行われます。前提条件は以下のとおりです。
- 2 つのサイトは異なる会計グループに属している。
- 2 つのサイトが同一通貨を使用している。
- 有効な価格コードが設定済みである。
システムは、 [品目価格設定] フォームの定義と一致する価格コードと、 [サイト間パラメタ] フォームで定義された元サイトと先サイトの組合せを確認します。
価格コードが一致していれば、システムは次に価格マトリックスで有効な価格方式を検索し、その方式を価格計算に使用します。有効な価格方式が見つからない場合は、単価が使用されます。
仕訳記帳は、サイト間受入先勘定とサイト間出荷元勘定で定義された勘定に基づいて自動的に作成されます。
未完了のトランザクション
マルチサイト在庫移動を実行するには、元サイトおよび先サイトのデータベースが動作し、グローバルデータベースに接続されている必要があります。この条件が満たされない場合は、このオプションが現在使用できないことを示すエラーメッセージが表示されます。条件が整うまでは、このトランザクションを実行できません。
マルチサイト在庫移動の途中でエラー状況が発生した場合(たとえば、データベースが切断された場合など)は、エラーメッセージが表示され、トランザクションは完了しません。トランザクション全体が取消され、ユーザは必要な条件が確立されてからトランザクションを繰り返す必要があります。
修正/訂正方法
マルチサイト在庫移動は、各サイトで在庫調整を入力することで修正または訂正できます。在庫は修正されますが、会計は修正されません。会計は、ユーザの状況と使用している原価法に従って手動で修正する必要があります。
会計トランザクション
マルチサイト在庫移動では、会計トランザクションがユーザの介入なしに自動的に作成されます。以下のテーブルでは、移動区分(会計グループ間、サイト間など)に応じて影響を受ける勘定をまとめています。使用される原価も異なります。たとえば、2 つのサイトで同じ原価を使用する場合があります。テーブルでは、以下のキーワードを参照してください。
キー:
全て = 勘定には、あらゆる状況の原価設定についてトランザクションが記録されます。元サイトと先サイトの原価が同じ場合は、トランザクションが記録される唯一の勘定になります。
y = 「y」は、この区分のトランザクションにこの勘定が影響されることを示します。
* = 標準原価を使用する場合、金額差異勘定に差異が記録されます。
原価変動:
原価 <> 原価 = 元サイトと先サイトの原価が異なります。
価格 <> 原価 = 元サイトは先サイトに価格を請求します。
移動区分別に基づいて影響される勘定
売上 | COS | 売掛 | 利益 | 原価 | 売掛 | 買掛 | 分割仕掛 | 価格差異 | 在庫調整 | CIring | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
会計グループ間 - 全て | Y | Y | Y | Y | |||||||
会計グループ間 - 原価<>原価 | Y | Y | |||||||||
会計グループ間 - 価格<>原価 | Y | Y | |||||||||
サイト間 - 全て | Y | Y | |||||||||
サイト間、原価<>原価 | Y | ||||||||||
倉庫間 - 全て | Y | ||||||||||
倉庫間 - 原価<>原価 | Y |
ロット追跡
ロット追跡は、各サイトで独自に行われます。つまり、サイトは各自のロット番号のみを作成または保守します。全てのサイトで共有されるロット番号の共通プールはありません。
ロット追跡を実行するには、以下が必要です。
- システムで使用可能なロット追跡
- 移動で指定した両サイトの品目保管場所詳細権限。
サイト間または会計グループ間移動を実行する場合は、先サイトを指定する際にロット番号を入力します。システムは、このロット番号を元サイトから先サイトに送ります。資材追跡レコードが自動的に作成されます。このレコードを使用して、トランザクションを後から追跡できます。
シリアル No.追跡
シリアル No. 追跡では、シリアル番号が全社的に使用される番号であり、各サイト固有のものでないことが前提条件となります。つまり、各サイトは、全てのサイトで使用されるシリアル番号を作成または保守します。
シリアル No. 追跡を実行するには、以下が必要です。
- システムで使用可能なシリアル No. 追跡
- 移動で指定した両サイトの品目保管場所詳細権限。
サイト間または会計グループ間移動を実行する場合は、先保管場所を指定する際にシリアル番号を入力します。[シリアル番号] タブが有効になります。資材追跡レコードが自動的に作成されます。このレコードを使用して、トランザクションをあとから追跡できます。
以下のテーブルは、シリアル番号を入力するためのオプションを示します。
元サイト | 先サイト
はい - シリアル追跡可 |
先サイト
いいえ - シリアル追跡不可 |
---|---|---|
はい - シリアル追跡可 | 元サイトがシリアル番号とプロセスを選択
処理先サイトは同じシリアル番号を処理 |
元サイトがシリアル番号とプロセスを選択
先サイト - このオプションは無効 |
いいえ - シリアル追跡不可 | 先サイトが新規シリアル番号を入力、処理 | このオプションは無効 |
資材トランザクションレコード
表の各移動区分に対し、以下の資材トランザクションレコードが作成されます。
移動 | 区分 | 参照 |
---|---|---|
保管場所間 | M | I |
倉庫間 | M | I |
サイト間 | M | I |
会計グループ間 | M | I |