原価計算プロセス

  1. 品目の工順の決定

    品目の標準原価を計算するには、最初に品目に適切な工順を決定する必要があります。この工順がわからない限り、品目の製造に用いられる作業セットは決定できません。加えて、品目製造に最適なオーダ数量を確定しておくことも必要です。

    製造オーダ数量が未確定のため、標準原価を計算すると、工順は [品目 - オーダ処理 (tcibd2100m000)] セッションの [固定オーダ数量] フィールドまたは [経済発注量] フィールドの数値に基づいて選択されます。[数量依存工順] チェックボックスがオフの場合、デフォルト工順が採用されます。詳細については、原価計算のための工順選択を参照してください。

    カスタマイズ品目の場合は、すべてのプロジェクト部品の完成品を合計して、完成品数が算出されます ([プロジェクトパーツ (tipcs2111m000)] セッションを参照)。他の点については、標準品目と同じ手順に従います (カスタマイズ品目の場合は例外で、数量依存工順が 1 つだけに限られます)。

  2. 作業の正味出力および総出力の計算

    正味出力および総出力は、どの作業に関しても計算されます。正味出力および総出力を使用して、作業の材料費および作業費が計算されます。

    最終作業の出力は完成品です。先行作業の出力は中間製品です。作業の仕損および産出率を考慮に入れたうえで、作業ごとに総出力が計算されます。

    標準原価計算の際は、まず最終作業の出力が決定されます。最終作業の正味出力の値は、ステップ 1 で決定したオーダ数量です。最終作業の仕損および産出率を使用して、正味出力から最終作業の総出力を計算できます。

    総出力 = [正味出力 × 100 ÷ 作業の産出率] + 作業の仕損数量

    最終作業の総出力は、前回作業の正味出力に等しくなります。前回作業の仕損および産出率を使用して、作業の総出力を計算できます。他の前回作業についても同様に、1 作業ずつ総出力および正味出力を計算できます。

    数量および金額をステップ 1 で求められた完成品の数で除算します。そうすることにより、数量および金額がすべて、1 つの完成品あたりの値に再計算されます。

  3. 作業費の計算

    作業手順に費やした人時間および機械時間を算出する必要があります。人時間および機械時間の計算方法は、作業における固定期間の有無に応じて異なります。詳細については、人/機械時間の計算を参照してください。

    作業費を計算するには、計算された作業時間数を作業費レートで乗算する必要があります。作業費レートは [作業費レート (ticpr1151m000)] セッションで定義され、労務、機械、および間接費に関して存在できます。作業費レートは、作業費レートコード ([作業費レートコード (ticpr0150m000)] セッションで定義) にリンクされます。

    作業費レートコードは、[ワークセンタ (tirou0101m000)] セッションのワークセンタ、または、参照作業 (tirou4650m000) セッションのワークセンタ/参照作業、あるいはその両方にリンクされます。ワークセンタにリンクされた作業費レート、またはワークセンタ/参照作業にリンクされた作業費レートのどちらを原価計算に用いるかは、標準原価計算パラメータ (ticpr0100m000) セッションの [作業費レートタイプ] フィールドの設定に左右されます。

    ワークセンタの作業費レートを原価計算に使用する場合、作業におけるそのワークセンタのワークセンタタイプを判定する必要があります。

    ワークセンタがメインワークセンタまたは正規ワークセンタである場合は、作業費レートが検索され、そのレートを使用して作業費が計算されます。ワークセンタが外注ワークセンタである場合は、外注方法および外注費レートが判定されます。

    数量および金額をステップ 1 で求められた完成品の数で除算します。そうすることにより、数量および金額がすべて、1 つの完成品あたりの値に再計算されます。

  4. 作業材料費の計算

    作業材料費を計算するには、資材投入量を知る必要があります。仕損率が考慮されない場合、資材投入量が正味投入量として参照されます。正味投入量は、次式で計算されます。

    正味資材投入量 = 先行作業の品目の総出力 × 部品表の正味数量 

    最終作業に関しては完成品の総出力が、ステップ 1 で算出されたオーダ数量に等しくなる点に注意してください。

    ただし、全作業の総資材投入量を知る必要があります。総投入量のベースとなるのは正味投入量ですが、次式のように部品表ラインの仕損数量が考慮されます。

    総投入量 = [(部品表ラインの仕損率 ÷ 100 + 1) × 正味投入量] + 部品表ラインの仕損数量

    投入量が構成要素の資材に関連することに注意してください。産出量は半完成品および完成品に関連するものであるため、ステップ 2 に記載された式で計算されます。

    作業の材料費を計算する場合、作業の総資材投入量が関連資材の原価で乗算されます。資材が購買品目である場合、購買価格が用いられます。資材が資材自体で構成される (製造) 品目である場合、品目の標準原価が用いられます。資材の標準原価は、[標準原価の計算 (ticpr2210m000)] セッションで選択されたマルチレベル計算方法に応じて計算されます。詳細については、原価計算方法を参照してください。

    資材の標準原価には、資材の品目倉庫に対する付加費用が含まれます。ただし、品目の倉庫の付加費用は、主品目の原価には総計されません。そのかわり、部品表の倉庫の付加費用が、主品目の原価に総計されます。

    原価計算時は、ファントムが通常品目として扱われます。

    数量および金額をステップ 1 で求められた完成品の数で除算します。そうすることにより、数量および金額がすべて、1 つの完成品あたりの値に再計算されます。

  5. 先行作業の検索

    この原価計算手順の直前のステップでは、工順の最終作業に関して原価が計算されます。別の前回作業が見つかった場合は、原価計算処理がステップ 3 から繰り返されます。前回作業が見つからない場合は処理はステップ 6 へ進みます。

    (標準) 原価計算時は、ファントムを使用して確立されたネットワーク工順は無視されます。ファントムの工順に関する原価は、ファントム品目の材料費に組み込まれます。

  6. リンクされていない資材の材料費の計算

    品目に作業が存在しない場合、作業費も発生しません。そのため、前回ステップは適用されません。資材が品目の製造に必要なので、これらのいわゆるリンクされていない資材の原価がこのステップで計算されます。非関連材料費の計算は、ステップ 4 に記載されている計算と同等です。

    注意点として、作業が使用可能であっても、[ジョブショップ資材リスト (tibom3610m000)] 詳細セッションまたは [部品表ライン - 資材-工順関係 (tibom0140m000)] セッションにおいて (一部の) 資材の [位置] フィールドの値が 0 (ゼロ) の場合、これらの資材は工順の最初の作業に要するものと想定されます。

  7. 追加費用の計算

    原価計算の最終ステップは、付加費用の計算です。いくつかのタイプの付加費用 (たとえば、品目、品目グループ、品目/倉庫の組合せ、一般倉庫に対する付加費用) は標準原価の計算時に区別されます。加えて、品目の倉庫入庫時、または倉庫出庫時に有効になる付加費用もそれぞれ区別されます。付加費用は [品目付加費用 (ticpr1110m000)] セッションで定義されます。付加費用は特定の順序で計算されます。この順序は重要です。付加費用は他の付加費用を介して計算されるためです。標準原価計算では、付加費用が次の順序で計算されます。

    • 品目の入庫付加費用
    • 品目グループの入庫付加費用
    • 品目/倉庫の入庫付加費用
    • 品目グループ/入庫付加費用
    • 一般の入庫付加費用
    • 品目の出庫付加費用
    • 品目グループの出庫付加費用
    • 品目/倉庫の出庫付加費用
    • 品目グループ/出庫付加費用
    • 一般の出庫付加費用

    以下の点に注意してください。

    • 一般倉庫は、[品目 - オーダ処理 (tcibd2100m000)] セッションで品目について定義した倉庫です。一般倉庫の付加費用は、[品目付加費用 (ticpr1110m000)] セッションで定義できます。この定義を行うには、[品目] フィールドおよび [品目グループ] フィールドを空のままにして、付加費用の定義対象となる一般倉庫を選択します。
    • [品目 - オーダ処理 (tcibd2100m000)] セッションで定義された倉庫が一般倉庫に等しい場合にのみ、原価計算の際に品目/倉庫付加費用が考慮されます。

    標準原価計算の際、品目および倉庫付加費用は、その付加費用追加点 (入庫または出庫) に関係なく組み込まれます。同じタイプの付加費用が複数定義されている場合、連番順 (最小の番号が最初) に処理されます。

  8. 総計原価または詳細原価

    LN では、標準原価の分類方法を以下のように決定できます。[品目 - 原価計算 (ticpr0107m000)] セッションで定義された原価構成要素の総計から、高度または低度の詳細まで。標準原価を詳細に分類したい場合、[品目 - 原価計算 (ticpr0107m000)] セッションで、関連する詳細原価構成要素の構造を持つチャートを入力する必要があります。詳細については、次のトピックを参照してください: 製造での原価構成要素体系.