回収不能債権の償却

貸倒損失とは、あらゆる努力を尽くして回収しようとしたにも関わらず、債権を回収できなかったために、債権者が損失として償却する (経費として分類される)、企業または個人に起因する金額です。貸倒損失金額は、「直接償却方法」 または 「引当金方法」 に基づいて算出された経費と見なされます。

直接償却方法

販売会社は、請求書の未払を確認した時点で、貸倒損失費勘定科目に請求書の金額を請求できます。勘定科目の記帳で、「貸倒損失費」 勘定科目は借方記入され、「売掛金」 勘定科目は貸方記入されます。したがって、貸倒損失費は特定の請求書に直接リンクされます。この入力により、売上が減少せずに、経費が増加します。

この方法は、初期売上に関連する収益よりも数か月遅れて経費が認識されることによって、同じ取引の要素が別々の期間に分割されるため、貸倒損失費の認識に最適な方法であるとはいえません。

引当金方法

販売取引が転記されると、それに関連する貸倒損失費の金額も転記されます。ただし、これは、計算履歴に基づいて貸倒損失の概算金額を算出できることが前提となります。勘定科目の記帳で、「貸倒損失費」 勘定科目は借方記入され、「貸倒引当金」 勘定科目は貸方記入されます。ただし、実際に消去される未払の 「売掛金」 の計算は、「貸倒引当金」 勘定科目が借方記入され、「売掛金」 勘定科目が貸方記入される取引の転記で行われます。

貸倒損失費の見積基準は、次のとおりです。

  • 全体の貸倒損失割合を算出してすべての売掛勘定に適用
  • 大きく占める割合を算出して、売掛金年齢調べレポートの (売掛金が報告される) 年齢調べバケットに適用
  • 顧客ごとのリスク分析に基づいた計算

この方法は、収益が認識された時点で総売上の一部が留保されることから、貸倒損失費を認識するための推奨方法とされています。この方法を使用すると、同じ期間中に発生した収益とそれに関連する経費が表示されるため、同じ会計期間内で総売上が収益に与えた影響を確認できます。損益計算書では、「貸倒損失費」 は 「営業経費」 セクションにライン品目として表示されます。

データ設定

回収不能のため、貸倒損失として設定する (償却する) 必要のある 「売掛金」 勘定科目を借方記入する勘定科目として定義する取引を [財務取引先グループ別の勘定科目 (tfacr0110m100)] セッションで作成します。[元帳勘定] フィールドで、「売掛金」 を償却する場合に借方記入に使用する必要のある 「総勘定元帳」 勘定科目を指定します。

「直接償却方法」 を使用する場合は、「貸倒損失費」 (経費タイプの勘定科目) を指定する必要があります。「引当金方法」 を使用する場合は、「貸倒引当金」 (資産相殺勘定タイプの勘定科目) を指定する必要があります。

処理

[貸倒損失償却 (tfacr2255m000)] セッションにアクセスして、償却する未決済の 「売掛金」 取引を表示できます。このセッションでは、貸倒損失を償却した後、必要な 「総勘定元帳」 転記を行うことができます。この処理を実行できるのは、償却する金額が [処理可能限度額] フィールドで指定された金額以下の場合に限ります。この値は、[償却のユーザ許容範囲 (tfacr0118m000)] セッションで指定できます。償却する金額が処理可能限度額を上回っている場合の処理は、次のチェックボックスのオン/オフ状態に応じて異なります。

  • [売掛金パラメータ (tfacr0100s000)] セッションの [貸倒損失償却の承認] チェックボックスがオンの場合は、まず請求書を提出し、承認を得た上で、償却を行います。
  • [売掛金パラメータ (tfacr0100s000)] セッションの [貸倒損失償却の承認] チェックボックスがオフの場合は、金額を償却できません。

請求書は、状況に応じて次のいずれかの方法で処理できます。

[請求先取引先別回収 (tfacr3607m000)] セッションの [償却承認用に提出] オプションを使用して提出し、承認を得ます。

[償却状況] が [提出済] に設定されている場合は、[請求先取引先未決済取引 (tfacr2520m000)] セッションの [償却の承認] オプションを使用して承認します。

[償却状況] が [承認済] に設定されている場合は、[請求先取引先未決済取引 (tfacr2520m000)] セッションの [償却の承認取消] オプションを使用して承認を取り消します。

[貸倒損失償却 (tfacr2255m000)] セッションの [アクション] メニューにある [処理] オプションを使用すると、請求書を償却して、仕訳帳を作成することができます。