移動平均単位原価 (MAUC)

移動平均単位原価 (MAUC) は、会計に使用される在庫評価方法です。

移動平均単位原価とは、現在の在庫の各単位の平均値です。在庫は、平均入庫価格を基準にして評価されます。新しく入庫するたびに移動平均単位原価が更新されます。

品目の棚卸資産評価額を計算するために、移動平均単位原価による在庫評価方法では次のようなあらゆるタイプの取引を使用します。

  • 購買
  • 生産
  • サービス
  • 在庫転送
  • 在庫調整

取引の結果として商品が入庫されるときに、入庫価格を使用して移動平均単位原価値が更新されます。

移動平均単位原価は、次の公式によって計算されます。

(既存の手持在庫 × 既存の移動平均単位原価) + (入庫数量 × 取引価格) ÷ (既存の手持在庫 + 入庫数量)

次のような取引が実行される場合、移動平均単位原価値は次のように計算されます。

取引処理タイプ品目数量品目の単価移動平均単位原価計算
1 入庫 10EUR 10EUR 10(10 × 10) ÷ 10 = 10
この場合、既存の手持在庫および既存の移動平均単位原価は利用できません。
2 入庫 10EUR 16EUR 13(10 × 10) + (10 × 16) ÷ (10 + 10)
3 出庫 10EUR 13EUR 13(20 × 13) - (10 × 13) ÷ (20 - 10)
出庫の場合、最新の移動平均単位原価が評価額として使用されます。出庫は移動平均単位原価に影響を与えません。出庫取引のために計算された移動平均単位原価は、前の入庫取引のために計算された移動平均単位原価と同じです。
4 入庫 5EUR 18EUR 14.67(10 × 13) + (5 × 18) ÷ (10 + 5)
5 出庫 6EUR 14.67EUR 14.67(15 × 14.67) - (6 × 14.67) ÷ (15 - 6)

 

移動平均単位原価の訂正

移動平均単位原価が不正確な取引価格に基づいている場合、その移動平均単位原価を訂正する必要があります。たとえば、商品の入庫に不正確な購買価格が使用されている場合、移動平均単位原価はこの不正確な購買価格を基準にして更新されます。このような取引価格は、購買オーダの入庫価格を訂正することによって訂正できます。入庫した商品が会計上、倉庫内に存在している限り、移動平均単位原価値は調整されます。購買取引だけでなく、他のタイプの取引が在庫レベルに影響を与え、その結果として移動平均単位原価値に影響が生じる場合があります。これらの取引についても、不正確な取引価格が入力されて、不正確な移動平均単位原価値が発生する可能性があります。

不正確な取引価格が僅かに存在するために不正確な移動平均単位原価値が発生した場合、移動平均単位原価の訂正は限られた数の品目に対してのみ必要になります。品目別移動平均単位原価訂正 (whina1231m000) セッションで、個々の品目の移動平均単位原価値を訂正できます。システム導入に関する障害などにより多数の品目で不正確な移動平均単位原価値が発生している場合、実際原価の修正 (whina1230m000) セッションで一定範囲の品目の移動平均単位原価値を訂正できます。

ある品目で、訂正された移動平均単位原価値に更新されるとき、LN では次の処理を実行します。

  • 品目在庫 - 原価詳細 (whwmd2517m000) セッションで、新しい移動平均単位原価値に更新します。
  • 在庫入庫処理 (whina1512m000) セッションおよび在庫入庫処理 - 原価詳細 (whina1513m000) セッションで、新しい移動平均単位原価値のレコードを作成します。
  • 財務会計でタイプが 「再評価」 の会計取引を作成して、移動平均単位原価の訂正を有効化します。この取引の取引発生元は再評価オーダになります。
  • 在庫再評価処理 (whina1522m000) セッションで、再評価オーダを作成します。再評価オーダには、再評価の理由を示す理由コードが伴います。