調整 - 概念と設計上の考慮事項

統合マッピング体系の設定と調整データの設定については、導入する前に十分に検討を加える必要があります。統合マッピングと調整の可能性をよく理解し、業務プロセスを精密に分析し終えた後ではじめて、きわめて適切かつ有益な設定の設計が可能になります。

このトピックでは、統合取引処理概念および調整/分析に固有の構成要素について説明したうえで、設定に関する一般的なガイドラインをいくつか提示します。

ガイドラインの要約

要約すると、主要ガイドラインは次のとおりです。

  • 複数の調整グループの統合伝票タイプを同じ元帳勘定にマップしない
  • 調整要素を十分な配慮のもとに割り当てる。最も特殊性の高い調整要素に番号 5 を割り当てます。
  • 期間処理例外を有効にすると、取引の転記が次のオープン期間まで許可されてしまうため、調整が複雑になる可能性があります。
注意

統合マッピング体系の設定と調整データの設定は、独立した 2 つの処理です。ただし、統合マッピング体系の設計は調整の要件により影響を受けます。

統合伝票タイプ

統合伝票タイプは、財務会計における統合取引のタイプを表します。財務分析と調整のために、統合伝票タイプは取引のタイプを識別します。

作業管理では、それぞれの統合取引はその作業取引発生元と会計取引の組合せで表されます。取引発生元/会計取引の組合せは、共通情報の財務会計/ロジスティックモジュールで統合伝票タイプに変換されます。例: 販売オーダ/出庫取引は、販売オーダ/出庫の記述をもつ統合伝票タイプに変換されます。

LN には、起こりうるあらゆる統合取引と、財務分析と調整中に識別する必要のあるあらゆる取引に対応する、事前定義の統合伝票タイプが用意されています。統合伝票タイプには、それぞれ対応するビジネスオブジェクトが添付されています。たとえば、さまざまな販売オーダ取引のための統合伝票タイプには、販売オーダビジネスオブジェクトがリンクされています。

統合マッピング体系では、統合伝票タイプを 1 つ以上の元帳勘定とディメンションにマップできます。通常、作業管理取引の借方側と貸方側は、別々の元帳勘定に転記されます。

調整グループには元帳勘定のタイプが反映されるため、各統合伝票タイプは 2 つの調整グループ (借方側に 1 つと貸方側に 1 つ) にリンクされます。

マッピング体系データの初期化 (tcfin0210m000) セッションを実行すると、使用する作業管理パッケージおよびモジュールに必要な統合伝票タイプに加えて、次の統合伝票タイプが LN で自動的に作成されます。

  • 為替差
  • 端数修正
  • 訂正
  • 開始残高

これらの統合伝票タイプのほとんどは、調整データのログを記録するためだけに使用されます。たとえば、開始残高統合伝票タイプがその例です。これらの統合伝票タイプをマップしたり、統合伝票タイプ (tfgld4557m000) セッションのマッピング体系で使用チェックボックスをオフにすることはできません。

調整グループ

調整グループは統合取引に使用される元帳勘定の種類を表すとともに、このように調整を実行できる統合元帳勘定のグループを表します。調整グループは、未着買掛金/購買オーダなど、調整エリアとサブエリアで構成されています。

それぞれの調整グループには 1 つ以上の統合伝票タイプがリンクされています。統合マッピング体系では、統合伝票タイプは元帳勘定とディメンションにマップされています。

それぞれの統合伝票タイプは、借方と貸方の 2 つの調整グループにリンクされます。調整グループの統合伝票タイプは、調整グループ別統合伝票タイプ (tcfin0115m000) セッションで表示できます。

調整グループ (tcfin0120m000) セッションでは、組織における調整/財務会計分析に必要な詳細および生成済調整グループの詳細を表示し、すべての設定を行うことができます。詳細については、調整グループの詳細を参照してください。

注意

良好な調整環境を実現するには、複数の調整グループの統合伝票タイプを同一の元帳勘定にマップしないでください。

調整要素

調整要素をオプションで使用して、調整データのレポートとその他のプレゼンテーションを構成し、調整データの分析に役立てることができます。調整要素のその他の例として、オーダ伝票番号、倉庫、購買元取引先などがあります。調整グループには、5 つまでの調整要素を含めることができます。各調整要素はビジネスオブジェクトの属性を表します。

調整取引を表示するときに、調整要素の取引をソートして調整要素の特定の値をもつ取引を検索できます。さらに、調整要素と要素の組合せに基づいてレポートを作成することもできます。

調整グループ (tcfin0120m000) セッションでは、最大 5 つの調整要素を調整グループに割り当てることができます。選択の対象となる調整要素は、業務プロセスおよびレポート要件によって決定されます。

たとえば次に示すセッションでは、調整要素を使用して、調整データのレポートとその他のプレゼンテーションを作成し、調整データの分析に役立てることができます。

  • 作業管理 - 財務調整 (tfgld4595m000)
    調整要素の取引をソートし、調整要素の特定の値を指定して取引を検索できます。
  • 調整データの出力 (tfgld4495m000)
    調整要素と要素の組合せに基づいて、レポートを作成することもできます。
  • 調整データの受入 (tfgld4295m000)および調整データの最終受入 (tfgld4295m100)
    範囲指定した調整要素値の調整データを受け入れることができます。

調整要素は慎重に割り当てる必要があります。調整データの設定後は、調整要素の変更を必要な場合だけにとどめる必要があります。

調整要素の割当は特に重要で、たとえば、在庫調整グループの場合、借方取引のビジネスオブジェクトと貸方取引のビジネスオブジェクトは異なります。これらの調整取引基準では、ビジネスオブジェクト ID 別の受入が不能なため、借方および貸方残高のみチェックボックスをオンにすることはできません。ただし、調整要素を受入の基準として選択して、借方取引清算と貸方取引清算の取引を受け入れることはできます。レポートでは、借方取引と貸方取引が品目コード別に印刷されます。

注意

調整要素には、1 から 5 までの番号が付けられます。最も特殊性の高い要素に番号 5 が割り当てられます。

マッピング要素と調整要素

調整要素はマッピング要素に似ています。マッピング要素は、調整要素の詳細レベルを表します。

マッピング要素は、ロジスティック処理 (元帳勘定またはディメンションにマッピングできるビジネスオブジェクト) の特性の 1 つです。調整要素は調整グループの統合取引 (統合伝票) に共通の特性で、これを使用してデータの分析と調整を行うことができます。つまり、各種ビジネスオブジェクトのマッピング要素のうち対応するものどうしは、調整要素によってリンクされます。

例: 次のマッピング要素はいずれも、調整要素 「品目」 に対応付けられています。

  • 製造オーダ/品目 (内部コード 666100000000)
  • 在庫処理/品目 (輸送) (内部コード 312100000000)
  • 販売オーダ/品目 (内部コード 112100000000)

マッピング要素の内部コードはそれぞれ異なりますが、物理的には製造オーダ品目、在庫品目、および販売オーダ品目はいずれも同じ品目です。これらのどの取引においても、対応する調整要素は 「品目」 (内部コード 014000000000) です。

同じ対応調整要素をもつ要素のみを特定の元帳勘定にマップすると、調整時にその勘定の差引残高が 0 になる可能性があります。

異なる対応調整要素をもつ要素を同じ元帳勘定にマップすると、調整が複雑になります。多くの場合、1 つの勘定は差引残高が 0 になりませんが、取引がマップされた元帳勘定のグループは差引残高が 0 になる可能性があります。

調整要素の割り当て方法の例

在庫処理の転記先は常に在庫勘定でなければなりません。在庫処理はいずれも在庫調整グループに属します。在庫勘定をいくつか使用して、それらの在庫勘定に一括して合計棚卸評価額を反映させることができます。マッピング体系詳細では、特定の在庫処理を特定の在庫勘定にマップできます。たとえば、特定品目または品目グループ (特定の倉庫にある品目) の在庫処理は、別々の在庫勘定にマップできます。

調整取引を倉庫別に集計して表示するには、「在庫」 調整グループの調整要素 1 に 「倉庫」 を割り当てます。

調整要素 1 以外にも、次のような調整要素を選択することができます。

  • 調整要素 2: 品目または品目グループ
  • 調整要素 3: プロジェクト
  • 調整要素 4: 原価構成要素

この方法で、調整データを倉庫別、品目別、プロジェクト別、および原価構成要素別に表示することができます。