取引時レートによる計算

H レートタイプと HI レートタイプの計算アルゴリズムは、HS レートタイプおよび HD レートタイプの計算アルゴリズムとは異なります。

HI レートタイプと HI レートタイプによる計算

利益剰余金の勘定科目を除くすべての勘定科目について、一括採用機能ではその期間にすでに存在する値の基準期間レートを使用します。次に、現在の期間と現在の決算レートを持つ基準期間とのすべての差異をローカル通貨で計算します。

例:

基準期間 01. 2020 において、American エンティティの株式資本の勘定科目の値はローカル通貨で 1,000 USD でした。使用されたレートは 1.5 で、666.67 EUR という値が算出されます。

期間 02.2020 では、資本が 500 増加しました。02.2020 の決算レートは 2.0 でした。EUR での正しい値を決定するには、次の計算が実行されます。

1,000/1.5 = 666.67
500/2.0 = 250.00
EUR での値: 666.67 + 250.00 = 916.67
加重平均の取引時レート: 1,500/916.67 = 1.6363

一括採用機能によって、新しい取引時レート 1.6363 が算出されます。このレートは、1,500 USD から 916.67 EUR への通貨換算に使用されます。

H レートタイプと HI レートタイプによる特殊な計算

利益剰余金の場合、前年の利益または損失が前年の利益剰余金に追加されていることが一括採用機能で考慮されます。損益計算書の結果のグループ値を決定するため、前年の損益は前の期間で使用したレートと同じレートでグループ通貨に換算する必要があります。

例:

基準期間 12.2019 において、American エンティティの利益剰余金の勘定科目の値はローカル通貨で 1,000 USD でした。使用されたレートは 0.6 で、1666.67 EUR という値が算出されます。この期間の利益は 500 USD でした。損益計算書で使用された全体的なレートは 0.65 で、769.23 EUR という値が算出されます。一括採用機能では、利益剰余金の現在の期間レートが次のように計算されます。

ローカル値の合計/グループ値の合計 = 現行年の利益剰余金のレート
説明 ローカル値 グループ値
前年の利益剰余金 1,000.00 1,666.67
前年の利益 500.00 769.23
合計 1,500.00 2,435.90 
1,500/2,435.90 = 0.615789

この計算は、現行年の利益剰余金では前年の損益の全額が認識されるという前提に基づいています。ただし一括採用機能では、配当金または勘定科目のそのほかの増減は含まれません。

この計算には次のステップが含まれます。

  1. Current local value - (Previous year sum of retained earnings + profit and loss local value) = Current period change

    期間の決算レートは、現在の期間の変化に使用されます。

  2. (Previous year sum of retained earnings + previous year profit local value) + Current period change local value/(Previous year sum of retained earnings group value + previous year profit group value) + Current period change group value

例を以下に示します。

1,200 – 1,500 = -300
-300/0.7 = -428.57
説明 ローカル値 グループ値
前年の利益剰余金 1,000.00 1,666.67
前年の利益 500.00 769.23
現在の期間の変化 -300.00 -428.57
合計 1,200.00 2,007.33 
ローカル値の合計/グループ値の合計 = 現行年の利益剰余金のレート
1,200/2,007.33 = 0.59781
注: 

この計算は、計算基準が前年の期間 12 の場合のみ使用されます。その年内の利益剰余金は、取引時レートを使用する他の勘定科目と同じ方法で計算されます。

HI レートタイプの計算では、グループ会社勘定科目の期間中の変化が考慮されます。

例:

基準期間 01.2020 において、American エンティティへの払込資本である勘定科目の値は次の値でした。

  • グループ会社 A: 残高 2,000 USD およびレート 1.2 により 1,666.67 EUR になります。
  • グループ会社 B: 残高 3,000 USD およびレート 1.3 により 2,307.69 EUR になります。
  • グループ会社 C: 残高 4,000 USD およびレート 1.4 により 2,857.14 EUR になります。

基準期間 01.2020 において、勘定科目の残高合計は 9,000 USD で、グループ通貨では 6,831.50 EUR です。

現在の期間 02.2020 において、決算レート (F) 2.0 を使用した場合、グループ会社の勘定科目の値は次のように増加します。

  • グループ会社 A: 残高が 400 USD 増加したことで 200 EUR 増加します。
  • グループ会社 B: 残高が 2,000 USD 増加したことで 1,000 EUR 増加します。
  • グループ会社 C: 残高が 5,000 USD 増加したことで 2,500 EUR 増加します。

現在の期間 02.2020 での増加の合計は 3,700 EUR です。基準期間 01.2020 の値は 6,831.50 EUR です。これにより、合計 10,531.50 EUR になります。

HS レートタイプと HD レートタイプによる計算

各期間のそれぞれ関連する増減に対して、HS レートタイプおよび HD レートタイプを指定する必要があります。

期末残高の取引時レート合計は、個々の増減の計算に基づきます。

一括採用機能では、選択した為替レートタイプを使用して、関連するスケジュールのグループ通貨で残高を再計算します。

次のオプションを使用できます。

  • F: 決算レート
  • A: 平均レート
  • N: 換算なし
  • WA: 加重平均

レートと組み合わせて、計算期間を選択する必要があります。次の計算期間を使用できます。

  • 現在の期間: 現在の期間のレートを使用します。
  • 基準期間: Business Modeling で定義された基準期間のレートを使用します。基準期間は通常、前年の期間 12 です。

スケジュール詳細の期首残高について、レートは基準期間から採用され、この設定は変更できません。これは、期首残高が前の基準期間の期末残高と一致する必要があるためです。ほかのすべての関連する増減については、決算レートまたは平均レートのどちらかが現在の期間で使用されます。たとえば、勘定科目の期末残高が 200 USD で基準期間の EUR/USD 換算率が 1.2 の場合、200 USD の期末残高は、同じレート 1.2 およびグループ通貨の同じ残高 181.80 EUR で現在の期間に採用されます。

一括採用機能を使用することで、コピーされたすべてのレートを修正できます。たとえば、特定の日次レートが必要な場合です。

加重平均レートによる計算は異なります。加重平均を選択すると、現在の期間の決算レート (F) は期間中の変化の計算に使用され、グループ通貨での基準期間の値に合計されます。

例:

基準期間 01. 2020 において、American エンティティの株式資本の増加額はローカル通貨で 1,000 USD でした。使用されたレートは 1.5 で、666.67 EUR という値が算出されます。

期間 02.2020 では、資本が 500 増加しました。02.2020 の決算レートは 2.0 でした。EUR での正しい値を決定するには、次の計算が実行されます。

1,000/1.5 = 666.67
500/2.0 = 250.00
EUR での値: 666.67 + 250.00 = 916.67
加重平均の取引時レート: 1,500/916.67 = 1.6363

一括採用機能によって、新しい取引時レート 1.6363 が算出されます。このレートは、1,500 USD から 916.67 EUR への通貨換算に使用されます。