スケジューリング概要

スケジューラは、既存のオーダ (近い将来完了しなければならない製造オーダ) のサブセットで作業する日付と時間を計算します。スケジュールをシフト、日、週、月など任意の期間に対して実行できます。しかし、通常は 1 日を期間として実行し、普通は毎日実行します。スケジューラは、作業の開始/終了時間を調整したり、作業順序を提案したり、在庫レベルの変化を報告したりします。また、レポートやグラフで表示できるサマリ情報(ジョブパフォーマンスなど)も生成されます。

スケジューラは、作業手順や段取、作業、移動時間などに基づき、定義された期間内の「発行済」ジョブの個々の作業を処理します。設定により、次をスケジュールすることも可能です。

  • MRP または APS で生成された計画オーダ
  • 確定ジョブ
  • 見積中ジョブ
  • 計画見積ジョブ
  • 生産計画

データフロー

ジョブは、部品表の 1 レベルの品目の数量の製造を承認します。スケジューラには、終了品目のスケジュールのみが含まれます。スケジューラでは、構成資材はジョブに引き当てられていると見なし、所要量として扱いません。品目によって作業手順が指定され、それによって品目の製造のために完了する必要のあるジョブ作業の順序が示されます。

各作業では 1 つ以上の資源グループを指定します。資源グループは、類似の資源の一覧です。資源は、作業員、機械、備品など、作業を実行できる会計グループです。作業では、最低 1 つの資源グループを設定してください。スケジューリング中、各資源の有効性および定義したルールに基づき、システムは作業実行のためにグループから 1 つまたは複数の資材を選択します。

ワークセンタは、スケジューリング処理から全ての原価設定情報を取り込み、スケジュール自体には直接影響しません。

フォワードスケジューリング対バックワードスケジューリング

資源を最大限に活用するため、スケジューラでは、現在の日付/時間から始まって、最後のジョブの最後の作業が終了するまで、先に進んでフォーワードスケジューリングを行います。スケジューラでバックワードスケジューリングは利用できません。すなわち、スケジューラは、最後の作業から始まって、最初の作業まで後から遡ってバックワードスケジューリングを行うように設定することはできません。

バックワードスケジュールが必要な場合、APS を使用して、スケジューリング出力フォームおよびレポートに計画実行で生成されたデータを入力し、スケジューリングを行うことができます。

イベントベースのスケジューリング

スケジューラは、需要が生産ステップを移動するプロセスで発生した全ての「イベント」のシミュレーションを実行します。たとえば、資源が作業を開始することはイベントで、その後に作業の完了のための別イベントが続きます。

スケジューリング中に発生する動作

スケジュールされる各需要について、スケジューラは負荷というユニットに数量を入れます。負荷は、品目の作業手順に沿って移動します。作業に到達した負荷は、ユーザが定義した、資源、ルール、作業時間などに基づき、次の処理ステップを通ります。

  1. 移動時間を処理します。負荷は前の作業(ある場合)からこの作業へと移動します。
  2. 資源を割り付けて負荷を処理します。割付ルールは、スケジューラが資源を割り付ける方法を制御するために定義します。割付ルールの条件が満たされると、作業処理が続行されます。満たされない場合は、スケジューラは作業処理を停止し、その作業は必要な資源が利用可能になるまで待ちます。その後、必要な/要求された資源が利用可能になるたびに、割付が試みられます。
  3. 段取時間と作業時間を処理します。スケジューラは、段取時間と作業時間を負荷に適用します。作業で[固定スケジュール時間]が使用されている場合、スケジューラは固定値を使用し、段取時間と作業時間は無視します。
  4. この作業でこの負荷に割り当てられていた資源を解放します。
  5. 終了時間を処理します。スケジューラは、作業後の終了時間を負荷に適用します。
  6. 作業処理が完了すると、負荷は作業手順内の次の作業に移動します。処理は、最後のジョブの最終作業に達するまで継続されます。

同じ資源の同時要求

品目の負荷は、資源の使用を競います。各資源は、負荷からの残要求を入れておく要求キューを持っています。作業の処理中、スケジューラが要求された資源グループのメンバを負荷に割り当てることができない場合、各資源グループメンバの要求キューに要求を入れます。資源レコード で設定された順序設定ルール は、キューの中での要求のソート順を決定します。

そのグループの資源が解放されると、スケジューラは待機中の負荷にそれを割り当て、その負荷の要求をその他のメンバ資源から削除します。複数の要求が資源の要求キューにある場合、スケジューラは、[選択ルール] を使用して要求の割当順を決定します。負荷がグループから複数の資源を必要とする場合、スケジューラは要求された数の資源がそのグループから使用可能になるまでは、その負荷に資源を割り当てません。

ジョブ日付

スケジューラでは、計算の入力値としてジョブの開始日を使用します。スケジューラでは、ジョブの開始日と終了日を更新する場合がありますが、MRP 計画モードを使用する場合は、開始日と終了日の設定は開始日と終了日が空白のときにのみ行います。作業手順/部品表のコピーを使用してサブ組立品目のジョブを作成すると、そのサブジョブの日付は空白になることがあります。APS を使用している場合、ジョブ日付が空白のときにジョブ日付を設定するには APS 計画を実行する必要があります。MRP を使用している場合は、スケジューラを実行すると空白のジョブ日付にジョブ日付が設定されます。

開始日時が同じ複数のジョブがある場合があります。スケジューラの実行前に [工程管理パラメタ] フォームで指定する [ジョブ発行ルール] によって、それらの同時ジョブをスケジューラで発行する順序が決定されます。デフォルトのジョブ発行ルールでは、ジョブ優先度値が高いものから先に発行されます。

作業段取時間

スケジューラで段取時間を考慮する方法や、同様の品目の順序を設定する(たとえば、青い部品から青い部品、赤い部品から赤い部品など)ことによって段取時間を最小化する方法については、「作業段取時間の概要」を参照してください。

シフトと休日

デフォルトでは、資源は 1 日 24 時間、週 7 日有効です。次のフォームで、施設のシフトと作業スケジュールに基づく資源の有効性をより緻密なものにすることができます。

  • [シフト] : 資源に割り当てて、指定の時間中資源を有効にします。
  • [例外シフト] : 資源に割り当てて、定義されたシフト内の停止時間または残業時間を定義します。
  • [休日] : シフトに割り当てられている全ての資源の停止時間。

作業を完了できないシフト間隔内に作業をスケジュールしないようにするための詳細は、「シフト残業の処理」のトピックを参照してください。

作業のオーバーラップ

一連の作業をオフセットして、同時生産を可能にすることができます。

詳細については、「作業のオーバーラップの定義」を参照してください。

部分完了の作業

スケジューラ実行を開始する際、作業が部分的に完了している場合があります(すなわち、前回のスケジューラ実行の終了時に作業が完了していなかったという意味です)。スケジューラ実行を開始すると、システムでは作業の処理を再開するうえで、同じ資源をその作業に割り当てる必要があります。既に開始されたジョブの作業が未完了であれば、スケジューラは、開始されていないその他のジョブの前にそのジョブの処理を開始します。

出力分析方法

スケジューラには、スケジュール出力を分析し、ボトルネック、遅延、一貫しない稼働率などの原因を判定するために一連の出力フォームとレポートが備えられています。

詳細については、「スケジューラ出力の分析」のトピックを参照してください。

PROGRESS バージョンとの相違点

下の表は、SyteLine SQL のスケジューリングと PROGRESS のスケジューリングの違いを要約しています。

目的 タスク SyteLine (SQL) タスク
1.作業を作成する。 ショップカレンダ、休日、ワークセンタ、部門、および機械のマスタファイルを設定します。

ワークセンタを識別し、それらを部門とセルにリンクします。また、ワークセンタ内に複数の機械があるかどうかも定めます。

シフトスケジュール、休日、資源、資源グループ、部門、およびワークセンタを設定します。

シフトスケジュールを資源に、資源を資源グループにリンクします。

資源グループをワークセンタにリンクします(オプション)。

各製造品目の作業で、作業時間に必要なワークセンタまたはワークセンタ/機械を識別します。 各製造品目の作業で、各作業に必要な資源グループ、およびそのグループからの資源数を識別します。作業時間 と 段取時間 (オプション)、および分割サイズ(オプション)を指定します。
2.スケジューリングのためクリティカルジョブ日付を識別する。 各ジョブについて、そのジョブの開始日または終了日を識別し、使用するスケジューリング方式を選択します。

フォワードまたはバックワードのスケジューリングを使用できます。移動時間および待ち時間も考慮できます。さらに、ジョブの開始または終了時に時間を追加することもできます。

各ジョブについて、MRP または APS の開始日と終了日(計画オーダを確定するとデフォルトになる)を受け入れるか、独自の開始日を入力してください。

手動でジョブを作成し、かつ APS を使用している場合、[ATP/CTP 取得] を使用して ジョブを計画 し、日付を計算します(この操作ではジョブは計画されるだけなので、スケジューラを実行する必要があります)。

バックワードスケジュールは行えません。ただし、APS プランニング機能では、納期からバックワードの計画を行います。

資源グループを 無限 としてマークしていない限り、有限のスケジューリングが使用されます。スケジューラは、待ち時間を無視します。最初と最後の作業の [移動] と [終了] のフィールドに開始時間と終了時間を追加することもできます。

3.ジョブの優先順位を決定します。 ジョブの優先順位を確立するには、手動で各ジョブに優先順位番号を与えるか、システムで納期またはクリティカルレシオを使用して優先順位を自動的に計算することができます。

優先順位は、ジョブがスケジュールされる順序を決定します。最高の優先度は、マイナスの数値です (数値が小さいほど、優先度は高くなります)。

ジョブの優先順位は、PROGRESS で行う場合と同じ方法で確立できます。しかし、新しいシステムではマイナスの優先順位番号は計算されず、納期遅延のものは全て優先度 0 に設定されます。

優先度の設定にはそれ以外にも有効な方法があります。

  • ジョブレベルでは、ジョブ発行ルールオプションを使用できます。
  • 作業レベルでは、順序または選択ルールオプションを使用できます。
4.ジョブをスケジュールする。 特定のジョブをスケジュールすることも、グローバルスケジューリングを実行することもできます。 フロア全体の指定期間中の全ジョブをスケジュールできます。

単一のジョブを計画する場合は、ATP/CTP 取得を使用します(APS を使用している場合)。

5.スケジューリング問題をトラブルシューティングする。 負荷表示を使用して、キャパシティを超過しているワークセンタを識別します。 スケジューラ出力分析フォームを使用して遅延ジョブとその原因を識別します。
6.作業を順序設定し発送する。 全てのワークセンタについて異なるソート基準を確立します。各ワークセンタにソート基準を割り当てます。スケジューリング後、資源グループ順序設定 フォームを使用してスケジュールをより精密なものにすることができます。

順序設定にはワークセンタ別に定義する次の 3 つのゾーンがあります。凍結ゾーン(変更不可)、順序設定可能ゾーン(経済的理由でジョブを並べ替えることが可能)、表示可能ゾーン(全てのジョブの予定を表示でき、必要に応じてそれらを移動することが可能)です。

その後、ソート基準に基づき、自動的にワークセンタ内の作業の順序を設定するか、手動で順序設定することができます。

スケジューラは、順序設定および選択ルールに基づき、自動的に作業の順序を設定します。

また カスタム順序設定および選択ルールを作成 することもできます。

資源グループの 作業の順序は手動で変更 できます。

結果は、優先順位と順序が設定されたスケジュールになります。